2015年08月30日

2015年長崎原爆朝鮮人犠牲者追悼早朝集会メッセージ

朝鮮人原爆犠牲者追悼碑.gif皆さま
遅くなりましたが、今年の長崎原爆朝鮮人犠牲者追悼早朝集会メッセージです。
どうぞご一読ください。
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   長崎原爆朝鮮人犠牲者追悼早朝集会メッセージ

 この長崎の街に原子爆弾が投下されて70年の歳月が流れました。私たちは朝鮮人原爆犠牲者の無念の死を悼み、爆心地公園に集っています。戦後70年の節目の年といわれ、戦前戦後の歳月を振り返り、さまざまな考察や総括が展開されておりますが、日本の植民地支配と侵略戦争の加害責任が真剣に問われているとは思われません。それどころか、歴史修正主義がはびこり、戦後レジームからの脱却を唱える政治すらまかり通っています。私はこの現状を深く憂い、到底黙認することはできません。なぜならば、そこに精神の堕落、倫理感の欠如を見ないわけにはいかないからです。多数の朝鮮人が被爆したのは日本の植民地支配と侵略戦争に原因があることは明らかであるにも拘わらず、その責任を痛感することなく、被爆者援護行政において差別排除してきた歴史は倫理感の欠如以外の何ものでもありません。今なお、医療費の支給に内外の差別があるのみならず、朝鮮民主主義人民共和国の被爆者には何の援護もありません。
 日本の加害責任が問われるのはもとより被爆者に対してだけではありません。侵略戦争の犠牲となった朝鮮人を、日本は無責任にも援護の対象外として切り捨てました。サンフランシスコ平和条約の発効(1952年4月28日)の2日後に制定された「戦傷病者戦没者遺族等援護法」に国籍条項を設けて2万人を超える朝鮮人を排除したのです。朝鮮人戦死者のなかには、少なくとも11人の特攻隊員と、BC級戦犯として処刑された23人が含まれています。BC級戦犯の朝鮮人は日本兵が嫌がる連合国軍捕虜の監視に当たらされたことも知らなければなりません。日本軍の一員として戦った者に対するあからさまな排除は人倫にもとる恥ずべき行為にほかなりません。戦後20年を経て締結された「日韓基本条約」によって「解決済み」とする政府見解に至っては、朝鮮民主主義人民共和国とは無関係であることに加えて、この条約は基本的に賠償条約ではなく経済協力協定に過ぎないことを政府自ら銘記する必要があります。

 戦後70年を過ぎてもなお戦時中の加害責任を国際社会から追及されている最大の問題として日本軍「慰安婦」問題があります。「慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、・・・ 慰安婦の募集については ・・・ 甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、・・・ また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」という河野談話に異議を唱える言説が国会内にさえあることは真に由々しきことです。国際社会、とりわけ国連から「真摯な謝罪表明と適切な賠償」と「教科書での教育」を行なうようしばしば勧告(社会権規約委員会、拷問禁止委員会、自由権規約委員会、人種差別撤廃委員会等)されていることに背を向け続ければ、「歴史倫理」(歴史に責任を負うこと)に背く国という不信感は避けられず、国民にとっても不名誉きわまりない事態に陥ります。戦後ドイツのように、歴史倫理に沿って加害責任を果たさないかぎり、次代を担う子どもたちにも不名誉のツケを負わせる羽目にならざるを得ません。在外被爆者問題、朝鮮人戦争犠牲者の補償問題、朝鮮人・中国人強制連行問題、日朝国交正常化問題、朝鮮人戦没者の靖国合祀問題、朝鮮高級学校に対する無償化不適用問題等々、未解決の問題は「慰安婦」問題に限りません。「戦後日本は、先の大戦における痛切な反省を胸に、歩みを刻みました」(安倍首相の米国議会演説)などと誇らしげに言うのは、植民地支配と侵略戦争の加害責任に背を向けて来た現実を無視する自己矛盾にほかなりません。

 戦後70年の今日、私たちは重大な岐路に立たされています。自公政権は集団的自衛権の行使を容認し、そのための「安保法案」を衆議院において強行採決しました。これは明らかに立憲主義にも民主主義にも違反するばかりか、日本を平和国家から戦争国家へと逆行させる背信行為です。再び戦争の加害も被害もあってはなりません。私たちは憲法を守る民意を結集してこの危険きわまりない法案の成立を断固阻止しなければなりません。今や全国的に高まっている廃案の要求は必ず実現すると信じます。
 無念やるかたないNPT再検討会議の決裂について一言申し上げます。これは、米国を初めとする核兵器保有国が主導したものでしたが、一方、日本政府も「核の傘」を容認してこの決裂に加担した責任を免れません。政府も国民も今こそ絶対悪の原爆投下までももたらした戦争責任を深く認識したうえで、核兵器の非人道性とその廃絶を世界に訴える責務があると痛感してやみません。

 以上の見地に立って、私は次のことを日本政府に要求します。皆さんの賛同をいただければ幸いです。
一、在外被爆者にも国内被爆者と平等に医療費を全額支給すること
一、朝鮮民主主義人民共和国の被爆者に被爆者援護法適用の道を開くこと
一、日本軍「慰安婦」問題をはじめ、未解決の加害責任問題を速やかに解決すること
一、日朝ピョンヤン宣言に基づいて、朝鮮民主主義人民共和国と国交を正常化すること

 最後になりましたが、朝鮮人原爆犠牲者の無念に思いを馳せて、早朝にもかかわらずご参集くださいました皆様に心から感謝申し上げます。
 2015年8月9日
             長崎在日朝鮮人の人権を守る会代表  實 康 稔
posted by toratanu21 at 09:04| 主なニュース・ご案内 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする